Ⅰ.『なぜ人は情報を集めて失敗するのか? 目標達成論』の感想文
私は、平成22年度弁理士試験に最終合格した。約7年間の受験生活であった。今、平均受験回数が4.5回位なので、
長い部類に入るかもしれない。今回の合格は、1年前に論文式筆記試験(2次試験)が不合格になった後に本書
を見つけて読んだことが、直接の勝因だったと思っている。今でも、私は、「何か目標に向かって動く」場合、
すなわち「移動」する場合には、事の大小を問わず本書の考えに基づいて行動しており、その意味では、
完全に自己同一化するに至っている。よって、感想文という形で客観化することがこれほど困難に感じるとは思わなかった。
本書は、伝統的なカテゴリーでいえば、勉強論、受験論、合格論に関する著作といえる。これらは、従来、
ややもすると個別具体的な経験則になりがちであった。しかし、本書は、試験に合格することを含めて、
一般に目標を達成するということを、ある地点からある地点への「移動」という自然現象に置き換え、
そこに働く原理は永久不変の「物理法則」(効率、判断、やる気)であることを説き、極めて説得力に富んだ
論理を展開することに成功している。
私自身は、元々は理科系出身であり、ものの仕組みや根本原理に興味・関心があったため、そのような
ことを知ると、知的好奇心が満たされる思いがするのであるが、本書は、勉強・受験・合格といった分野
で初めてそれをやって見せてくれた私にとって記念すべき書籍である。
私は、本書の教えを実践して弁理士試験合格を果たすという貴重な体験をすることができた。自分が実験台
になって、本書に書いてあることが本当であることを証明できたのである。
私が本書の内容を理解した上で、今回の論文式筆記試験の直前に至った心境は、次のようなものであった。
◆ 人間である以上、「効率」「やる気」「判断」のどれもが、また、そのうちのどれか一つでも完璧
ということはあり得ないし、またその必要もない。結果を出すためには、特に相対評価の比重の高い試験
の場合には、これらのうちどれか一つでも他の人に比べ著しく劣ったものがあれば、高い確率で不合格になる。
論文式試験のコア情報(本質は多数決の試験。)を忠実に守れば、本当に簡単な試験である。◆
本試験の前の夜は緊張というより興奮のためほとんど寝られなかったが、そのことが不利に働くとは感じ
なかった。本試験当日は、人によって色々な感じ方があるかもしれないが、私の場合、本書の基本的な考え
を9ヵ月位実践してきたことで、特に不安みたいなものを感じることはほとんどなかった。ただ、
寝てないということで、体調が万全の時であれば書けたであろうことが2項目ほど書けなかったが。
本書の読前読後の相違は、私にとって著しく大きい。本当の意味で「考える」ことができるようになった
と感じている。以前は、自分の知識体系を総動員して、最も適切なものをその場その場で瞬時に判断して
いる感覚だったのが、今では、核要素=最上位のフレームワークに上がって検討すれば、必ず本質と向き
合うことができる、という自信につながっている。これは本書のエッセンスの一つであろう。そして、
現に、以前よりも適切な判断・行動ができるようになっている。
外部要因と内部要因との差の認識ができるようになったことも大きい。自分が関与できるのは内部要因
(上記の3つの核要素)だけであるが、実は、日本という恵まれた国に生まれて来たという事実は、
国際的に考えれば良い意味での外部要因なのだということは、事あるごとに思い出さなければならないと思う。
つまり、下駄を履いて生まれてきたようなものだ。これは、牛山先生の『自動記憶勉強法』等から得た考えである。
以上、主に勉強的な側面について書いてきたが、上記の核要素が、ビジネスをする上でも非常に有用な示唆
に富んでいることについても納得できた。
今回は、弁理士試験合格という事態が重なったので、敢えて勉強面を強調した感想になったが、本書の核要素
という考えは、ビジネスをはじめ非常に適用範囲が広い。その点を最後に確認しておきたい。
Ⅱ.『自動記憶勉強法』の感想文(増補改訂版ではありません)
本書を初めて読んだのは1年2ヶ月ほど前であると思う。当時私は、弁理士論文式筆記試験(2次試験)が
不合格であったため、何か勉強全般に関するヒントを探していて、ディジシステムと牛山先生の存在を知った。
この時点で、すでに6年間ほど弁理士試験の勉強をしていたため、これから何か大量に憶えなければならないと
いう切迫感の中にはなく、ちょっとした鍵となるようなものが発見できれば、ブレイクスルーが起こるだろうと
いう予感があった。この役割については、ディジシステムのHPの文章と『目標達成論』が十分過ぎるほどに
担ってくれたため、弁理士試験合格という観点から本書の感想文を書くのは、多少困難であると感じる。
しかし、今回読み返してみて、本書は、非常に深く哲学的な内容を含んでいると同時に、実利的にも繰返し読む
べき本であることが分かった。ただ、本書には、端々に冗談めいた表現があると思いきや、その一方で非常に
シリアスな表現もあることから、初めて読んだときには、想定している読者が少し分かりにくいという印象を持った。
ところが、それらの表現が非常に計算し尽されたものであることが分かったのは、何回か読んだ後のことである。
ものすごい文章力である。
本書は様々な論点を含んでいるため、私なりに、以下の5つの点について、整理を試みたいと思う。
1.勉強法(特に自動記憶勉強法)
2.やる気
3.記憶と創造性の関係
4.教育論
5.「自動」の意味
以下、この順に評したい。
1.勉強法(特に自動記憶勉強法)
「第5章 魔法の記憶法」(自動記憶勉強法)が、本書の公開する勉強法の中でのハイライトと思われる。
私なりにまとめると、最低限基礎的なことを押さえてから問題集の暗記に取り掛かり、憶えにくい事項を、
他の事項と区別できるようにICレコーダーに吹き込み、それを何か別の作業をしているときに聞き流す
ということであろう。私の従来の感覚では、集中して理解するからこそ憶えられるのだ、という意識が
あったような気がする。しかし、本勉強法は、「短期記憶を利用した記憶法」であり、人間にはワーキング
メモリーがあるから誰にでも可能な勉強法なのだ。なお、「記憶」全般については、ディジシステム社
『高速の英語習得 DVD講座』で得た背景知識があったので、抵抗感なく受け入れることができた。
私は本勉強法の実験台にはなっていないため、本勉強法の効果のほどを報告するわけにはいかないが、
大量に憶えなければならないときには是非試したいと思っている。
2.やる気
本書「第6章 本当の自動化」に関係する部分である。
私は、『目標達成論』で説かれている核要素である「やる気」「効率」「判断」のうち、弁理士試験の
勉強時間はある程度確保していたので、「やる気」は問題なかったと思い、ブレイクスルーを起こした
原因は、「効率」と「判断」だと思っていた。しかし、今回読み返してみて、本書第6章の「やる気」
の説明にも非常に啓発されていたことを思い起こした。
本書P.165-169において、人間には「…をしたい」と欲求と「…をしたくない」という苦痛から逃れる欲求
があることが解き明かされ、成功の風船に50のガス、このままじっとしていられなくなるかもしれない
風船に50のガスを入れることによって、フワフワと上昇し始める、という解説がある。これは、
私が今までに聞いたことのある人間性に関する説明の中で、ジャンルを問わず最高ランクに位置すると思う。
人間は、生物学的にも精神的にも、そんなに単純ではないことの左証であろう。この解説を知ると、
ほとんどの家庭教育・学校教育における言説が、極めて浅はかに思えてきてしまう。
一つの例だが、私も弱い一人の人間なので、精神的に自分を上手く守れそうにない時もある。
そのような時、この解説ほど役に立つものはないと感じている。
3.記憶と創造性の関係
「第7章 自動化の後に、自動化する自分を助ける事」P.196-200に【記憶と創造性の関係】の記載がある。
ここには、私自身が長らく追い求めていた問いの答えの一つが書いてある。これは奇跡だろうか?
「記憶と創造性についての最後の私の意見は、せいぜい記憶作業が、創造性に及ぼす影響は、私の感覚では
30%程度であり、重要なのは物事の関連性を見抜く能力、つまり右脳的な、活動がどれほど活発かという事である。」
(P.199)の箇所は、本当に私もその通りに考えていたことである。
私の経験からすると、上記のような意味での本当の創造性は、少なくとも日本の学校教育においては、ほとんど尊重
されていないのではないだろうか?本来の創造性がもたらすかもしれない既存のシステムへの挑戦というような性質は、
そもそも、学校のカリキュラムというような定型的な性質と相容れないとも言えよう。しかし、私はこの分野の専門家
ではないので、深入りはやめておく。
4.教育論
「第7章 自動化の後に、自動化する自分を助ける事」P.213-218に【メッセージに関して】の記載がある。
この部分は、私が評するのが恥ずかしくなるほど、牛山先生の深い精神性が表現されている箇所である。
ヘルマンヘッセの『車輪の下』の引用と牛山先生ご自身の体験談のイメージが奇妙なほどに重なって、
「重圧」「絶望」「格差」といった社会の暗い側面が鮮烈な質感でもって現わされている。私が言うと軽いのだが、「壮絶」である。
牛山先生は、低成長時代の新たな社会問題である「格差社会」の問題を解決する手段として、
ご自身のご職業である「教育」を捉え直していると思う。まさに、脱帽と言うほかはない。
5.「自動」の意味
本書においては、全般的に「自動」がキーワードである。たまたま、手許に広辞苑の電子辞書があるので引いてみると、
「①自然に動くこと。自分の力で動くこと。②特別の手続きをしなくても自然に行われること。」とある。
第5章の自動記憶勉強法の「自動」は、「特に勉強しているという意識を持っていないのに、知らない間に憶えている」
というようなニュアンスであろう。また、第6章では、「自動」的にやる気が出てくる方法(上記の風船の例)が記してある。
第7章【メッセージに関して】では、人間は、好むと好まざるとにかかわらず、「格差社会」の犠牲者=社会的弱者に
「自動」的になってしまうという恐ろしい現実を見せつけられる。しかし、希望はある。「自動を以て自動を制す」
ではないが、社会的弱者の立場から社会的強者の立場へ上がることさえ「自動」的にできるのだ、
牛山先生のメソッドを使えば。これほど心強いことはない。
Ⅲ.『速読の技術 中級編 DVD講座』の感想文
恥ずかしながら、ディジシステムのHPの速読に関する文章を読むまで、速読というものにそれほど価値を置いていなかった。
以前の私の感覚では、文字で表されている対象の理解度に応じて、文章を読む速さが異なるのであり、また、
自分がよく理解していることであっても、そこに今まで自分が発見していなかったことを発見した時等は、
その箇所を他の物事との関連性等を考慮に入れて非常に丹念に読む結果、かなりゆっくりした速度で読んでいたこともあった。
しかし、「速聴」で速い音声を聴くことに慣れていた結果、文章を読む際には、全般的には、頭の中で完全に音読的な
処理をしながらも、ある程度速く読んでいたと思う。
本講座を観るまでは上記のようであったから、物事全般に対して深く広い理解をしつつも、トータルの読書量はそれほど多
くはなかったと思う。
私は、速読関連の情報等をほとんど仕入れていなかったので、本講座以外のものと比較することはできないが、本講座では、
牛山先生による非常に分かりやすい説明がなされており、「決定版」と言ってよいのではないだろうか。
特に、「実利」を最優先すべきだとの価値観には、非常に共感できる。
本講座から、速読の本質は、「文字を読む」のではなくて「紙面を観る」ことであると気付いた。現実の仕事においては、
「紙面を観る」ことで時間を稼ぎ、記憶効率・作業効率を良くして、一番重要な箇所に早くたどり着いて、そこに時間と
エネルギーを十分に投入できるようにして、達成率を上げることだと思う。もちろん、自分が習熟していることについて
書かれている文章の方が、速読はし易い。しかし、自分が不案内のことでも、速読でとりあえず「観て」しまうことができ
れば、それが必要な情報なのかを考えることの方に、脳のキャパシティーを振り向けることができる。
牛山先生の著書『なぜ人は情報を集めて失敗するのか? 目標達成論』で説かれている、目標達成の核要素である「やる気」
「効率」「判断」の中で、速読は、主に「効率」の向上の点で圧倒的なパワーを有している。それから、「判断」を高める
ための読書においても、読書自体を効率的にしてくれる。
今年、弁理士試験に合格できた。その要因としては、理論面としては、前掲書『目標達成論』で目標達成の原理が分かった
ことであると思っているが、実践面としては、速読に向いた復習用レジュメを自分で作成したことだと思っている。
自分がよく理解した事項をコンパクトに整理したレジュメを速読した場合のパワーは強烈である。試験が始まる前の30分
ぐらいの間に、十分過ぎるほどの総復習ができるのである。あとは、他の人が書かないことを自分も書かなければ完全
に勝ちである。そして、本当にそのようになった。牛山先生の速読メソッドの賜である。
Ⅳ.『高速の英語習得 DVD講座』の感想文
弁理士試験勉強中にも英語を細々とやっていたのであるが、信頼できる牛山先生が英語についても講義をしていること
を知り、大変興味を持ったため購入した。
正直に言うと、私は英語というか外国語があまり得意ではないと思う。基本的には考える事が好きなのだが、
外国語は、考えていてもダメで、スポーツの様な反復が重要だというところが苦手にさせている原因であるかもしれない。
本講座の英語習得の理論は、大変説得力があると思う。特に、短期記憶から長期記憶へ移行させるところの説明は非常に
丁寧で、「復習」が習得の鍵を握っているところは、他の科目と大差ないと感じ、攻略の可能性を感じさせてくれた。
なお、「速読」とも関連するのだが、「英語の速読」をできるようになるための何かヒントがあれば、そのような情報も
できれば盛り込んで頂けるとさらに良かったのではないかと思った。というのは、『速読の技術 中級編』の方では、
右脳においてイメージをダイレクトに喚起するような「音読」的な処理をしない(左脳を通さない)眼と脳の使い方に言及
されているのに対し、本講座(『高速の英語習得』)の場合には、英語の「音声」と右脳的な「イメージ」が直結するよう
な形であるので、「視覚」と「音声」と「イメージ」の関連性が私には今一つ分かり辛かったからである。
今回の弁理士試験合格の直接的な原因は、『目標達成論』の理論を実践に取り入れたことであると思っている。しかし、
本講座も、弁理士試験合格の影の立役者であると言える。というのも、私は、論文式試験の1ヶ月くらい前からであろうか、
本講座の「高速で密度が高く実行率の高い復習システムを手に入れる事」の周辺箇所を、毎晩寝る前に観ていたのである。
この受験勉強における最重要点を、布団に入ったリラックスした状態で繰返し観ていたため、自分の勉強スタイルも、
必然的にこの様な復習システムの構築へと誘われていった。また、試験が近付くにつれて無意識のうちに緊張が高まって
いったのであるが、牛山先生の講義を観ると、気持が落ち着くというのも大きかった。
いま、弁理士試験合格が決まったので、以前ほどには条文やレジュメを見る必要性はなくなったため、電車の中で「DUO3.0」
を声に出さずにシャドーイングしている。弁理士試験前後でTOEICを何回か受けたが、まだ、効果がてき面に出
ているとは言い難い。弁理士試験が終わったばかりなので、これからだと思う。「毎日の勉強時間よりも勉強期間の方が
重要だ」という指摘はその通りだと思うので、継続してやっているところである。
それなりの効果が出たら、是非ご報告したいと思っている。
山越先生は情報のメタ化が得意な、頭のいい人という印象があります。
私自身、いろいろな人の小論文を見るので、学校のテスト成績以外の頭の良さに非常に敏感です。
思考力に敏感なんですね。思考力がある人と無い人はすぐに分ります。
知識が多いとそれだけ思考力があるかというと、世間ではそのように思われているところがありますが、
決してそんな事はありません。知識の量に比例して固定観念が頭に蓄積されて、地蔵のように
思考にやわらかさが無い人が時々いますが、こういう人は思考力が無いんですね。
山越先生の場合、いつも柔軟に発想され、考えられ、適切に情報も吸収してしまうようです。
ですから速読も勉強に取り入れるのが上手だったのかなと感じています。
弁理士試験はTOP校の法学部を卒業した人が何年も受験を続けても合格できない
事もある最難関クラスの国家試験です。司法試験と同じように、何百ページもの論文用の文章を暗記し、
国際的な法律を含む条約等の条文も理解した上で暗記し、分厚い条文集を隅から隅まで理解して暗記する事が
要求されます。山越先生は東京大学の大学院に進学されており、元々は研究職を目指されていた極めて知性的な
方なんですね。
弁理士をご存じない方の為に念のために説明しますと、弁理士とは、無形の財産である知的財産権の専門家です。
最近では青色発光ダイオードの訴訟事件が記憶に新しいですね。(数億円規模の案件でしたがあの事件では訴えた
側が勝訴しています。)人が発明したものは特許があれば、法的に守られるわけです。
弁理士は知財のプロですので、弁護士と同じように法廷に立つ事もあるようです。
山越先生の合格証書です。
(山越先生が勉強に使っていた条文集の写真です。)